2025年5月27日
「運動は脳に良い」というテーマに関する研究はこれまでにも数多く存在するが、近年発表されたメタ・メタ分析(複数のメタ分析を統合したもの)によって、これまでの知見をさらに補強する結果が示された。今回の調査では、25万人を超える大規模データが用いられており、信頼性の高い結果として注目されている。
運動が脳に与える影響の要点
オーストラリアの研究チームによって行われたこの研究では、2700件以上のランダム化比較試験(RCT)が分析対象となった。評価されたのは以下の3つの認知機能である:
- 記憶力
- 実行機能(注意力・自己コントロール・判断力など)
- 全般的な認知能力
この膨大なデータを精査した結果、明らかになったのは次のようなポイントである。
結論①:運動は誰にとっても脳に良い
年齢や性別、健康状態にかかわらず、運動は認知機能の向上に寄与することが確認された。特に注目すべきは、激しい運動よりも軽〜中程度の運動(例:ウォーキング、ヨガ、太極拳、マインドフルネス系の動き)のほうが、より高い効果を発揮する傾向が見られた点である。
研究チームは、「ヨガのような穏やかな運動でも認知機能を改善できる。それが誰にでも実践できる点で重要だ」としており、激しいトレーニングをせずとも脳の健康を保てる可能性が示された。
結論②:年齢層ごとに見られる効果の違い
年齢や状態により、得られる効果にも差があることが明らかになった。
- 子どもやティーンエイジャー:軽い運動でも記憶力の向上が顕著。発達段階にある脳は、変化に対する感受性が高いためと考えられている。
- ADHDを持つ人:適度な運動が実行機能(注意力や自己制御)を改善する効果を持つことがわかった。
こうした傾向は、発達支援や子育てにおける実践的なヒントとなるだろう。
最も効果的だった「意外な運動」とは?
興味深いことに、本研究では**エクサゲーム(体を動かすタイプのビデオゲーム)**が、全体的な認知機能を最も大きく改善するという結果も報告された。
いわゆる「リングフィット アドベンチャー」や「FitXR」、「ダンスダンスレボリューション」などが該当する。研究者たちは、この結果について次のように分析している:
- 身体運動に加えて、注意・記憶・判断といった複雑な認知負荷が組み合わさっている
- 動作記憶、視覚的キューの認識、タイミングの調整など、同時処理が求められる
つまり、体と脳を同時に使うことが自然に促される点が、脳機能の活性化につながっていると考えられる。
記憶力アップに最適な運動は?
また、記憶力を改善する運動としては、ヨガと太極拳が最も効果的であるという分析結果も報告された。これらは見た目は穏やかであるが、実際には次のような高度な認知活動を伴う。
- ポーズの記憶
- 呼吸と動作の同期
- 内面の感覚や身体状態への集中
これにより、記憶力だけでなく、集中力や身体感覚の統合力も鍛えられるとされている。記憶に不安がある人にとっては、朝ヨガなどから始めるのが有効な選択肢となるだろう。
まとめ:脳を鍛える運動習慣は「ゆるくてOK」
総合的に見て、脳の健康を支えるには、以下のような日常的な「軽めの運動習慣」が最も効果的とされている。
- 毎日30分程度のウォーキング
- 週2〜3回のヨガや太極拳
- 定期的なエクサゲームの実践
こうした手軽な習慣こそが、将来的な認知機能の低下を防ぎ、脳の活性化につながる可能性が高いと示された。特別な設備や激しい運動は不要――“ゆるめの運動”こそ、脳に効く時代が来ているようだ。
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