【研究紹介】
― ゴールの種類によって「尊敬する人」か「反面教師」かを選ぶ ―
新年を迎えると、多くの人が目標を立てますが、実際には達成に至らないケースも少なくありません。そんな中、ロールモデルの活用が目標達成に有効であるとする研究が注目されています。
本稿では、リュミエール・リヨン第2大学による研究(※)をもとに、「正しいロールモデルの選び方」と「目標の種類に応じた適用方法」を紹介します。
◆ ポジティブでもネガティブでも効果あり?
一般にロールモデルとは、自分が尊敬・模範とする人物のことを指します。しかし本研究によると、**反面教師のような「ネガティブなロールモデル」**でも一定の効果があると示されています。
キーポイントは、目標の種類に応じてロールモデルの性質を使い分けることです。
◆ 目標のタイプとロールモデルの関係
目標のタイプ | 内容 | 有効なロールモデル |
---|---|---|
獲得ゴール | 「○○を手に入れる」ことを目的とする(例:集中力を高める、健康的な体を手に入れる) | ポジティブなロールモデル(尊敬する人物) |
予防ゴール | 「○○を避ける」ことを目的とする(例:病気を避ける、悪習慣を断ち切る) | ネガティブなロールモデル(反面教師) |
この使い分けによって、ロールモデルが目標達成の行動変容に効果的に働くことが、実験によって確認されました。
◆ 実験例:食生活の改善
研究では、被験者に「食事改善」をテーマにした目標を与えた上で、異なる種類のロールモデルを提示しました。その結果、目標の種類(獲得型 or 予防型)とロールモデルの方向性(ポジティブ or ネガティブ)が一致したグループのほうが、より良い成果を上げたと報告されています。
◆ 正しいロールモデルの活用ステップ
- 目標を設定する
例:「毎日30分運動する」「夜にスマホを触らない」など。 - 目標のタイプを特定する
その目標が「何かを得るためのもの(獲得ゴール)」なのか、「何かを避けるためのもの(予防ゴール)」なのかを明確にします。 - ロールモデルを選ぶ
自分の目標に合ったロールモデルを設定します。尊敬する有名人・友人・フィクションのキャラクターなど、どんな存在でも構いません。以下の問いを活用すると選びやすくなります。
- この人は自分のゴールにふさわしいだろうか?
- 何を学べるか?
- もしこの人が応援してくれるとしたら、何と言ってくれそうか?
◆ まとめ
ロールモデルは単なる「憧れの存在」ではなく、目的に合わせて戦略的に活用することで、実際の行動変化を引き出す手段にもなります。
とくに、新年に掲げた目標を持続・実現したい方は、自分の目標タイプに合ったロールモデルを設定することで、その達成率を高められるかもしれません。
参考:
(※)Lemoine, J. E., et al. “The motivating power of role models: The influence of model positivity and goal type.” European Journal of Social Psychology, 2019.
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