ストレスの大きいタスクは朝と夜、どちらに行うべきか?科学的アプローチ
ストレスのかかる重要な仕事やプレゼン、あなたは朝型と夜型、どちらで取り組むべきだと思いますか?この疑問に対して、最近の研究が興味深いヒントを与えてくれています。
コルチゾールとストレス耐性の関係
「朝はストレスホルモンが自然に増える」と聞いたことがある人も多いでしょう。ここでいうストレスホルモンとは、コルチゾールのこと。一般的にはストレスの悪者として語られることが多いですが、実は私たちの体を目覚めさせたり、ストレスに対処するためにとても重要な役割も果たしています。うまく付き合えば、非常に頼もしいホルモンなのです。
北海道大学による実験の詳細
このテーマについて、北海道大学の研究チームが興味深い実験を行いました。対象となったのは、健康的な生活リズムを持つ27人の男女。全員が9時から17時までの一般的な勤務スタイルで、睡眠も良好な人たちです。
被験者は2つのグループに分けられました:
- 朝グループ:起床から2時間後(午前中)に心理的ストレスを与えられる
- 夕方グループ:起床から10時間後(夕方)に同じストレスを与えられる
このとき使われたのは「トリーアの社会ストレステスト」という、心理学の分野でよく使われる手法です。参加者は初対面の面接官の前で5分間の暗算を行い、その後さらに5分間スピーチをするという、強い心理的プレッシャーを感じる設定です。
ストレス反応の違いは?
実験の結果、両グループとも心拍数の変化には大きな違いは見られませんでした。つまり、リアルタイムで感じる緊張感は朝でも夕方でも同じくらいです。しかし、体内のコルチゾールの変化には明確な差がありました。朝にストレスを受けたグループのほうが、コルチゾールの分泌量が大きく増加したのです。
いったいこれはどういうことなのでしょうか?
朝のほうがストレス処理能力が高い理由
一見すると「朝のほうがストレスに弱いのでは?」と思うかもしれませんが、実際にはその逆です。コルチゾールの分泌は、ストレスに対処するための「HPA軸(視床下部-下垂体-副腎系)」がしっかり働いている証拠です。
- 朝はコルチゾールが多い=HPA軸が活発で、ストレス処理がしっかり機能している
- 夕方はコルチゾールが少ない=HPA軸の働きが鈍くなり、ストレス耐性が下がっている可能性が高い
つまり、ストレスがかかる場面ほど、朝のほうが体のストレス対処システムがきちんと働いてくれる、というわけです。
結論:負荷の高いタスクは朝にこなすのがベスト
この研究結果から、心理的な負荷が大きい作業や意思決定、重要なプレゼンなどは朝に行うのが理にかなっているといえます。意志力が朝に高いという話も、こうしたストレス処理システムのコンディションと関係しているのかもしれません。
朝のうちに難しいタスクに取り組むことで、体の本来のストレス耐性を最大限に活かすことができるでしょう。ストレスの大きい仕事や挑戦ごとは、できるだけ午前中にスケジューリングするのがおすすめです。
コメント