学習法についての研究は数多く存在しますが、その中でも特に効果が高いとされているのが「他人に説明する」という方法です。近年の研究によって、このシンプルな行為が記憶の定着や理解力の向上に大きく貢献することが明らかになっています。
なぜ「他人への説明」が効果的なのか?
- 理解が深まる
他人に説明しようとすると、自分の理解があいまいな部分が浮き彫りになります。このプロセスが、知識の整理と記憶の定着につながるのです。 - 能動的な学びになる
「説明する」という行動は、単なる受動的な復習とは異なり、自らの言葉で内容を再構築する作業です。結果として、学びがより主体的なものになります。
このようなメリットは実感としても多くの人が経験しており、たとえば人前で話す機会があると、そのテーマについて記憶が鮮明に残るという声も少なくありません。
にもかかわらず、なぜ実践しない人が多いのか?
興味深いのは、この方法が効果的であるにも関わらず、多くの人が実際にはあまり使っていないという点です。
ある研究では、参加者に「GPSの仕組み」を解説する動画を見せたうえで、「学んだ内容をどう復習するか?」を自由に選ばせたところ、大半の人が「メモを取りながら動画を見直す」といった受動的な方法を選びました。
特に、自分の知識に自信がない人ほど、「他人に説明する」タイプの学習法を避ける傾向が強かったのです。
実際の効果はどうだったのか?
続いて行われた別の実験では、同じくGPSの仕組みを学んだ後に、
- 「他人に説明するつもりで文章を書く」グループと、
- 「別のテーマについて書く」コントロールグループ
を比較したところ、説明型の学習をしたグループの方が、テストの成績が明らかに良かったとのこと。これは、元々知識に自信がなかった人においても同様の傾向が見られました。
つまり、「他人に説明する学習法」は、誰にとっても有効であるということです。
自信がない人が説明型学習を取り入れるには?
研究チームは、知識への自信のなさがハードルになっている人のために、以下のような工夫を推奨しています:
- 簡単なテストで自信をつける
まずは簡単な問題で成功体験を積むことで、自己評価が高まり、「教えること」への心理的抵抗が減ります。 - 「説明は効果的だ」と知っておく
説明が学習に役立つという事実を知るだけでも、モチベーションが上がるというデータもあります。 - 相手がいなくても、自分に説明してみる
ノートに書く、声に出して説明するなど、自分自身を相手にするだけでも十分効果があります。
「教えることで学びが深まる」というのは、教育現場でもよく言われる話ですが、科学的にもその有効性が支持されているようです。知識の定着を図りたい人や、学びをアウトプットに活かしたい人は、ぜひこの方法を試してみる価値があるでしょう。
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