19世紀末のアメリカでは、現在とはまったく異なる価値観のもとで肥満が捉えられていた。その一例として知られているのが、チャウンシー・モーランという人物である。
彼は1890年前後、サーカスに出演していたパフォーマーで、観客からは「ファットマン(太った男)」の愛称で呼ばれていた。とはいえ、その呼称は親しみを込めたものというよりも、“異常な肥満体”という珍しさに対する視線を含んでいたという。当時、極端な肥満は医学的な問題というよりも、社会的・視覚的な“娯楽”として扱われていたのだ。
こうした背景を踏まえると、当時の社会が肥満という身体的特徴をどのように位置づけていたかが垣間見える。いわば「他者性」や「逸脱」の象徴としての肥満が、見世物小屋やサーカスといった場で消費されていたのである。
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