A:将来、夢

「ジャンケンに必勝法はあるのか?」―ゲーム理論と心理の交差点

ジャンケンは一見、単なる運任せの遊びのように思えるが、実はこの単純なゲームも、古くからゲーム理論の対象として研究されてきた。これまでの通説としては、「最適な戦略は完全にランダムに手を出すこと」とされており、その背景にはナッシュ均衡と呼ばれる理論がある。映画『ビューティフル・マインド』で知られる数学者ジョン・ナッシュによって提唱されたこの概念により、合理的な選択のバランスが説明されている。

確かに、ジャンケンが確率論に基づくゲームであると考えれば、ランダムな手の選択が最もフェアで予測されにくい戦法だという点には、多くの人が納得するだろう。実際に過去の小規模な実験でも、最終的にはプレイヤーの選択が無作為に近づくという結果が得られている。

しかし、最近行われた大規模な実験では、これまでの常識を覆すような人間の行動パターンが明らかになった。360人の学生を対象に、1人あたり300回におよぶジャンケンを実施した結果、興味深い傾向が浮かび上がったのだ。

その傾向をまとめると、以下のようなものである:

  • 勝利直後のプレイヤーは、同じ手を繰り返し出す傾向がある
  • 2回以上連続で負けたプレイヤーは、前回相手が出した手に勝てる手を選ぶ傾向がある

たとえば、初回に「グー」で勝利した人は、次もまた「グー」を選びやすい。一方、何度か連続で「グー」を出して負けた人は、「相手はまたパーを出してくるだろう」と予測し、それに勝てる「チョキ」を選ぶ傾向が強くなる。つまり、人間は無意識のうちにパターンを読み、相手の手を予測しようとするという心理的なバイアスが存在するようだ。

この結果をもとに、「数学的に有利なジャンケン戦略」を考えると以下のようになる:

  • 勝った場合:前回と同じ手を避け、相手が出した手を選ぶ(例:グーで勝ったら、次は相手のチョキを真似て出す)
  • 負けた場合:相手が出した手に勝てる手を選ぶ(例:グーで負けたら、次は相手のパーに勝てるチョキを出す)

もちろん、これは複数回勝負を前提とした戦略であり、単発の勝負には効果を発揮しにくい。しかし、人間の無意識のクセを逆手に取るという意味では、確率だけでは見えてこなかった「勝ち筋」が存在することを示唆している。

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