―どちらが読解力に優れているのか?最新メタ分析による結論
紙の本と電子書籍のどちらで読書をするのがより効果的なのか、という問いはここ数十年で広く議論されてきました。例えば、プリンストン大学の研究では「手書きのノートはPCよりも記憶に残りやすい」といった結果が示されています。このテーマは他の研究でもたびたび検証されており、総じて「紙のほうが優勢」というイメージが定着しつつあります。特に紙媒体のほうが集中力を維持しやすく、内容の記憶や理解に有利であることが指摘されています。
最新のメタ分析による比較とその結論
バレンシア大学などの研究チームが行った最新のメタ分析では、紙の本と電子書籍の読書が理解力にどのような影響を与えるかについて、過去の質の高い54件の研究データを統合し、比較検証がなされました。この分析の主なポイントは、「紙の本と電子書籍で、読解力に差が出るのか?」という疑問に明確な答えを与えることにあります。
結果として、2つのメタ分析のいずれにおいても「現時点の研究では明らかにデジタル(電子書籍)のほうが読解力で劣る」という結論が示されました。デジタルテキストと印刷テキストを比較した場合、電子書籍のほうが文章の理解度が低いという傾向が一貫して見られています。さらに、
- 読書時間が限られている状況では、紙の本の方がさらに有利
- 紙の優位性は文書のジャンルを問わず一貫して確認されている(技術文書でも物語でも紙が有利)
といった現象が確認されています。
効果量とその現実的な意味
この研究では、デジタルデバイス利用の効果量(-.21)は「小さい」とされていますが、特に学習や教材への影響力の大きい小学生などでは、この差は決して無視できません。
なぜ紙が優位なのか?―議論の余地と今後の展望
この違いが生じる理由についてはまだ明確な結論が出ていないものの、
- デジタルに慣れていない世代が多く含まれているため、今後は差が縮まる可能性がある
- そもそも電子書籍は人間の集中力を奪いやすいという先行研究もあり、本質的に不利な面があるのではないか
という2つの主張が存在します。
ただし、時間に余裕がある場合は、紙と電子書籍の差はほとんど確認されないことも分かっています。したがって、
- 電子書籍を読むときは、ゆっくり時間をかけて読む
- 「短時間で読み終わりたい」といった場合には、紙の本を選ぶ
といった使い分けが現状では最も賢明だと言えるでしょう。今後、デジタルネイティブの増加によってこの差が縮まるかどうかは未知数ですが、これらの知見を参考に、自分の目的や状況に応じて両者を使い分けるのが理想的です。
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