観察研究で明らかになった関係破綻の主な要因
恋人や夫婦といったカップルの関係が崩壊する主な原因は何か?――このテーマに迫った興味深い観察研究があります。ギリシャ語を話す604人、中国語を話す799人のカップル(交際中あるいは既婚者)を対象に、人間関係でありがちな78パターンの問題をリストアップし、「今の関係を保つうえで何が一番やっかいか?」という質問を投げかけ、主成分分析で13ジャンルに分類した上で、最も破壊力の大きい要因を調べました。
カップルの関係を崩壊させる“ビッグスリー”
調査結果から、カップルの仲を壊しやすい三大要素として以下が浮かび上がりました。
- 粘着性(束縛や執着の強さ)
参加者の30%が「自分自身の粘着性」を挙げました。いわゆる“束縛が激しい”“独占欲が強い”といった行動が、パートナーの自由を奪い、関係に息苦しさやトラブルをもたらしやすいことが示されています。 - プライベートな時間と空間の不足
23%が「自分だけの時間や空間が足りない」ことを問題視。パートナーと過ごすことは大切ですが、それぞれの自由や“ひとり時間”が失われると、ストレスや不満が蓄積し、破局のリスクが高まります。 - 長時間労働
22%が「仕事が忙しすぎて関係が維持できない」と回答。現代社会ならではの問題で、仕事に追われてコミュニケーションや共有体験の時間が減ることが、関係の質を大きく損なう要因となっています。
進化心理学的な視点
この研究では、感情の「粘着性」について進化的な解釈も加えています。カップルが長く一緒にいることで子育てや遺伝子伝達の成功率が高まるため、「嫉妬」や「執着」といった感情はパートナーの浮気を防ぐ“監視システム”として進化してきたと考えられています。しかし、こうした感情が強すぎると、健全な関係が損なわれやすく、現代社会の多様な人間関係の中ではむしろマイナスに働くケースも多いようです。
また、粘着性が高まるとプライベートな時間や空間の減少にもつながり、悪循環が生まれることも示唆されました。
男女や文化による違い
- 男性は「パートナーの情熱の衰え」を、女性は「自分自身の粘着性」を関係破綻の要因として挙げやすい傾向がありました。
- ギリシャ人サンプルでは「自分の性格的な問題」、中国人サンプルでは「努力不足」が破綻要因として多く挙げられるなど、文化による違いも見られました。
まとめ
この研究が示すのは、カップルの関係を守るためには「適度な距離感」「個人の時間の確保」「仕事と私生活のバランス」を意識することの大切さです。束縛や執着が強すぎたり、プライベートがなかったり、仕事に追われてコミュニケーションが減ると、関係は徐々に蝕まれてしまいます。自分やパートナーの傾向を客観的に見つめ、健全なバランスを保つことが、長続きするカップルの秘訣と言えるでしょう。
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