——最新の系統的レビューより
筋力トレーニングにおいて長年信頼されてきたサプリメント「クレアチン」。その効果は運動分野にとどまらず、認知機能向上の可能性も示唆されるようになってきました。2018年に発表された系統的レビュー(※1)は、この分野に新たな視点をもたらしています。
◆ クレアチンとは?
クレアチンは、筋肉や脳内でエネルギー源(ATP)の生成を助ける成分。特にATPは脳にとって重要なエネルギー物質であり、クレアチンの摂取が脳機能にも影響を与える可能性が指摘されています。
◆ レビューの概要
- 実施機関:テッサロニキ・アリストテレス大学など
- 対象研究:過去の高品質な研究6件(計281名)
- 主な測定項目:
- 記憶力(短期・空間)
- 情報処理速度
- 推論能力(IQテストに類似)
- ワーキングメモリ
- 注意力・実行機能など
※研究対象が多岐にわたるため、メタ分析は行われていません。信頼性はやや限定的ですが、示唆には富んでいます。
◆ 得られた知見の要点
◎ 短期記憶と空間記憶:
向上の可能性が高いとされ、記憶力全般への良い影響が見られました。
◎ 知性(推論・数字処理):
3件中2件で向上が確認。思考力や論理的処理能力の改善が示唆されました。
△ 注意力と実行機能:
結果が一致しておらず、有意な改善とは断定できない段階です。
◆ 効果の出方には個人差あり
興味深い点として、クレアチンの効果には被験者の背景に応じた違いが見られました。
- 効果が出やすい群:ベジタリアンが中心の研究
- 効果が出にくい群:若年層が中心の研究
これは、クレアチンがもともと肉や魚に含まれる栄養素であるため、食事からの摂取が少ない人ほど効果を実感しやすい可能性を示しています。
◆ まとめ
現時点でのエビデンスを見る限り、クレアチンは脳機能のサポートにも有望であると考えられます。特に記憶力や推論能力といった認知領域で、一定の恩恵を受ける可能性があります。ただし、効果には個人差があり、年齢や食生活の影響も考慮する必要があります。
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